ライトノベルの仲間たち。ヤングアダルト、ジュブナイルなど

「ライトノベル」「ヤングアダルト」「ジュブナイル」など、辞書的には少年少女・若者向けの小説・本という意味ながら、少しづつニュアンスの異なる本のジャンルをまとめて整理してみました。

児童文学と一般文芸の間に位置する、少年少女・若者向けの小説は、日本では1960~1970年代に登場したといわれています。その後、読者層を微妙に変えながら、呼び方が移り変わり、

ジュブナイル → ヤングアダルト → ライトノベル → ライト文芸

と変遷してきました。また、「ジュブナイル」「ヤングアダルト」は教育的に配慮された児童文学の一部とみなされることが多いですが、「ライトノベル」「ライト文芸」は娯楽目的のエンターテイメント小説と見なされています。

ライトノベル

若者向けのエンターテイメント小説です。最近の日本の出版社は、若者向け=ゲームや漫画を楽しんでる世代向け、という意味で使っているところが多いので、むしろオタク向けというほうが適切かもしれません。年齢的には幅広く、10代後半~40代ぐらいが対象です。

1990年頃に、パソコン通信「NIFTY-Serve」で、集英社コバルト文庫や角川スニーカー文庫辺りの小説を呼ぶために作られたことが知られています。世間一般で使われるようになったのは2000年代に入ってからで、これは、これらの小説の読者層が大人まで広がるにつれて、若者向けを意味する「ヤングアダルト」や子供向けを意味する「ジュニア小説」のような呼び方が廃れていった結果です。このことからも、「若者向けといいつつ年寄りしか読んでない」と言われたりもします。

ヤングアダルト(YA)

直訳すると「若い大人」で、そこらから若者向けの本を指します。「高校生を中心に大人にも人気がある本」と説明されることが多いです。まるで「ライトノベル」と同じ意味に見えますが、「ヤングアダルト」は教育的に配慮されていて健全です。「ヤングアダルトは健全、ライトノベルは不健全」と覚えておけば問題ありません。

1990年代までは、いまのライトノベルと同じニュアンスで使われていました。ライトノベルが世間一般で広く使われるようになったあと、児童文学の中で特に高年齢向けのレーベルが「YA」を名乗るようになったこと、そして、もともと図書館業界で使われていたことから、健全なイメージが強くなり、今では、「ライトノベル」とは区別して使われることが多くなりました。また、名前に「アダルト」とあると不健全に見えるとの理由で、最近では「YA」と略称で呼ばれることが多いです。

ジュブナイル

少年少女を意味する英語で、そこから少年少女向けの作品を意味します。日本では、1970年代に広く使われるようになったため、当時人気のあった『時をかける少女』『ねらわれた学園』などの少年少女向けのSF作品のイメージが強いです。その後、少年少女向けの作品は「ヤングアダルト」と呼ばれることが主流になったため、今ではほとんど使われることはありません。

ジュニア小説・ジュニア文庫

ジュニア=子供ですが、だいたい10代向けの小説を指します。1960年代に、少女向けの小説を呼ぶ際に広く使われるようになったため、少女向けのニュアンスが残っています。

1990年代まで、若者向けの小説を指す場合に、本屋では「ヤングアダルト」よりも「ジュニア小説」「ティーンズ小説」と呼ばれていたことのほうが多かった気がします。

少女小説

少女向けの小説を指す言葉として戦前から使われていましたが、1980年代に集英社コバルト文庫が戦略的に使用していたことで、広く使われるようになりました。当時のコバルト文庫に触れていた人の中には「少女小説」を特別視されてる方も多く、最近の少女向け小説は少女小説に含まない、と考えている方もいます。「少女小説」をライトノベル扱いすると怒る方がいることも有名ですね。

ティーンズノベル・ティーンズ小説・ティーンズ文庫

名前の通り、10代向けの小説を指します。名前そのままなので、変な色がついていないことが特徴です。

キャラクター小説

読者層ではなく小説の内容に着目し、キャラクターが魅力的な小説のことを指します。若者向け小説の呼び方が「ヤングアダルト」から「ライトノベル」に移りつつあった2000年代初頭によく目にしましたが、最近また、「ライト文芸」や「キャラ文芸」と一緒に耳にすることが多くなりました。「そろそろ違う呼び方を考えようぜ」という時に「これからはキャラクター小説と呼ぼう」という人が登場してくる感じですね。ただ、「キャラだけじゃない!」という声も多く、なかなか主流派になりません。

ライト文芸・キャラ文芸・キャラノベ・新文芸など

「ライトノベルと一般文芸の中間的な小説」と呼ばれることが多いですが、呼び方も定義もあやふやです。というのも、出版社が若者向けの新レーベルを立ち上げる際に、新しさを強調するために新語を作って名乗ってるだけのケースが多く、実質的には、ライトノベルと大きな差がないので。強いていえば、ここ10年ぐらいで新レーベルがたくさん出た「なろう系単行本レーベル」と「『ビブリア古書堂の事件手帖』フォロワー系文庫レーベル」のどちらか、もしくは両方をこの分類に置くことが多いです。

若者向けの小説は、呼び方が古臭くなってくると呼び方を変えていった歴史があるので、そのうち、ライトノベルという呼び方は廃れて、「ライト文芸」とか「キャラ文芸」とか呼ばれるようになると思っています。

[ 2018.09.23 ]