2021年 12月 1日
-
オーバーラップ オーバーラップ文庫
◆ ハズレ枠の【状態異常スキル】で最強になった俺がすべてを蹂躙するまで(8) /篠崎芳 -
怒涛の大展開っ!! アライオン王城における大魔帝と勇者たちの戦いが、ほんとにまったく先が読めず、まさに圧巻。聖の動きも驚きなのだけど、それよりも、桐原がすげぇ。正直、桐原って咬ませ犬なポジションだと思っていたんですよ。それが、ここでこの行動かよっ。まさかのまさかだよ。完全に予想も期待も超えた動きで、この展開が書ける作者はマジ凄いわ。……桐原と聖は素晴らしいのだけど、もう一人のS級勇者のいいんちょうは、いいんちょうらしいんだけど、マジに、桐原のことぜんぜん理解してなくて、ちょっと酷すぎるだろ。いやー、こんないいんちょうだと、このあと、ちょろく女神に騙されていく展開しか見えねー(笑)。
一方の主人公サイドは、異界の勇者を除くとアライオンで最強の第六騎兵隊隊長ジョンドゥとの対決。手に汗握る展開ではあるのだけど、まあ、順当。むしろ、アライオン十三騎兵隊を相手に、もっと無双しても良かったかもしれないと思ったり。
終わってみると、これで、アライオン、女神陣営が壊滅してるわけだけど、ミラ帝国と同盟を組んで、いよいよ女神に反攻していく展開かしらん。むしろ、女神側を弱体化させすぎてる気がするのだけど、いいのかこれ? って、ラストでまた、爆弾を突っ込んできたぁぁぁぁっっっ!!
2021年 12月 14日
-
KADOKAWA MF文庫J
◆ ノーゲーム・ノーライフ11 ゲーマー兄妹たちはカップルにならなきゃ出られないそうです /榎宮祐 -
ちょっ、カップルにならないと出られない部屋だと?! 空、白、ステフ、ジブリール、イミルアインの5人が閉鎖空間に閉じ込められてのデスゲーム。これって、ふつーであれば、番外編とかおまけシナリオでやるようなネタだと思うんだけど、それを本編でやるとかスゲーな。だって、本編でやるには、人間関係的に劇薬すぎるだろー。実際、いろいろと崩壊してる(笑)。凄い。
空と白、『 』が、はじめて敗北する話でもあるのだけど、これは、物語を一気に進めるような転換点になるのかなー。でも、次回はエルヴン・ガルドとの戦いだとすると、エルヴン・ガルドでは、ちょっと敵役としては不足あるような気もする。まー、とにもかくにも、次巻がすごく楽しみだ。
……しかし、前巻の発売から二年半。刊行ペースが明らかに開きはじめていて、そこは、ちょっと心配だな。
[ ノーゲーム・ノーライフ ]
2021年 12月 19日
-
TOブックス
◆ 本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~ 第五部「女神の化身VII」 /香月美夜 -
いよいよラストに向けた怒涛の展開がはじまったっ!!
四年目の貴族院での生活がはじまったと思ったら、一気に物語が動きはじめたっ。ローゼマインの覚醒からいよいよアーレンスバッハとの開戦前夜。これは先が読みたい、めちゃくちゃ読みたいっ!! 展開としては、ちょっと強引な気もするのだけど、この、ぐわっと畳みかけるような展開は、読んでてぐいぐい引き込まれるよなー。
それにしても、やっぱ、ローゼマインの成長にはびっくりだ。そして、いろんな意味でヤバいだろ。ただ、ビジュアル的には、ちょっとそこまで神々しさを感じさせるような変化がないのがちょっと残念かしらん。
しかし、今回のフェルディナンドはポンコツだなぁ。ディートリンデにしろレティーツィアにしろ、あそこまで気持ちが汲み取れないのはマズイだろ。どう見ても人を使うのがダメなタイプで、アーレンスバッハでちゃんと仕事できてるのか、こいつ。計略、謀略を諮るにしても、人の行動が読めないのは致命的で、いや、ここで失敗しないと、その後の展開に続かないのはわかるんだけどさー。
[ 本好きの下剋上 ]
2021年 12月 22日
-
バンブーコミックス タタン
◆ 星屑セレナーデ 星の瞳のシルエット another story (5) /柊あおい -
ラスボスの香澄ちゃん登場っ!! って、最終巻なのか。
『星の瞳のシルエット』の20年後の物語もいよいよ最終巻。前からちらちら姿は見せていたとはいえ、満を持して、香澄ちゃん登場。もちろんガッツリ絡んでくるわけだけど、うーん、あんまり香澄ちゃんらしさを感じないなー。『星の瞳』と違って、香澄ちゃんの視点ではないからかなぁ。いや、いきなり重い設定をぶちこんできたので、そのせいもあるかもだけど。あと、ビジュアル的にはちょっと何とかならなかったものか。森下さんもそうだったけれど、みんなの憧れだったのだから、もうちょっと美人さんに描いてくれてもいいと思うのだけど。
しかし、香澄ちゃんはともかく主人公の柚希には、本当にさっぱり共感できない。思考パターンが意味不明すぎて、マジに読んでてキツかった。この最終巻でも、結局、なにがやりたかったんだ? なんか勝手に暴走して、よくわからないうちに終わってしまった……。やっぱ、『星屑セレナーデ』という作品は、あの懐かしい『星の瞳』のキャラが出て来る瞬間は楽しいのだけど、物語としては、ちょっとダメだったんじゃないかなぁー。
懐かしいキャラという意味では、おおぅ、最後の最後で出てくるか。そして、まさか彼も一コマだけとは出てくるとはっ。スナフキンはヤバい(笑)。いやー、やっぱ、懐かしいキャラが出てくるだけですげー楽しい。本編の連載終了からは30年以上経つけれど、やっぱり、『星の瞳』は最高の少女漫画だったと思う。大人になった香澄ちゃんたちが見れただけでも、本当に良かったっ!!
[ 『星屑セレナーデ(5)』感想 ]
2021年 12月 25日
-
standards
◆ ライトノベルの新潮流 /石井ぜんじ/太田祥暉/松浦恵介 -
ライトノベルの黎明期から2021年までを詳細に解説した一冊。なるほど、今まで読んできたライトノベル本の中ではツッコミどころが少なく、凄く違和感がない。なんというか、巻末の参考文献を元に綺麗に纏めなおしたような内容で、筆者自身の主義主張やこだわりをあんまり感じさせないような筆致なんだよね。そして、ラノベブロガーから編集者に転身した平和さんや「このライトノベルがすごい!」の岡田さんも協力しているのか。これは、手堅い。
特に、第一章は、自分が以前纏めた「ライトノベルの起源とその後の流れ(2015年版)」とか「平成のライトノベル史 いちご文庫戦争からなろうまで」と似たような視点になっていると思うんだけど、どうかしらかしら。読んでて、ほんとしっくりくる。
ただ、メインライターが「ゲーメスト」の編集長をしていた石井ぜんじということで、個人的には、今までのライトノベル本にない、ゲームに関連した新しい知見とかを期待していたのだけど、そういう新しい要素を感じられなかったのは、ちょっと残念。まあ、「ゲーメスト」というと、1990年代格闘ゲームという印象なんだけど、それだと、あんまりライトノベルとは関係ないかしらん。
個人的に気になったのは、少女小説がライトノベルの近似ジャンルとして別枠になってる件で、えー、少女小説を別枠にしちゃうと、1970年代から1980年代かけて、どうやってライトノベルらしいライトノベルが成立していったかみたいな話が、ぽっかり抜けちゃうじゃん。なのでこの本だと、ジュブナイルSFからソノラマ文庫が生まれた後に、1980年代後半にはファンタジーの影響を受けた角川スニーカー文庫や富士見ファンタジア文庫に取って代わられたと、単にそれだけになってる。いや、少女小説を別枠にするにしても、ライトノベル本なんだから、もっとライトノベルとの関連性を意識して書かないといかんのではないか?
少女小説に限らず、近似ジャンルの話がすごくもったいなくてさー、ライト文芸やジュブナイルポルノ、海外の話なんかも、あんだけページ数を割いて書いているのに、あくまで紹介にとどまってるのよ。ライトノベルとの影響とか関係とかにはあんまり踏み込んでいない。そこら辺は、本当に残念だと思う。
まあ、本の構成自体が、その時代その時代にこんなメディアがラノベの周辺にあって、その時にこういう人気作があったと事実をまとめるように書かれていて、筆者の主張や考察のようなものがあんまないのよね。なので踏み込むとかそういう話ではない気がする。ただ、そういう作りなのであれば、文章で綴るよりもむしろ年表のようなスタイルがいいんじゃね?と思ったりもするのだけど、でも、この本には年表がないんだよな。それもちょっとどうかと思う。
筆者の主張を抑えて参考文献を丁寧に纏めたといえば、それはそれで価値はあるし、そういうのが好きな人も多いと思うんだけど、個人的には、筆者の主義主張がはっきした内容の方が読んでいておもしろいと思うんだけどなー。
[ ライトノベルの新潮流 ]