-
集英社 集英社新書
小説家という職業 /森博嗣 -
「他の職種なら当たり前のことが書かれてるだけ」という話も聞く本書ですが、逆に言えば、小説家を含む出版業界がビジネス的には未熟ということを浮き彫りにする内容、ということかしらん。むしろ、他の小説家が、どれだけビジネスとして意識しているのか、森博嗣の意識と乖離しているのか、というのが気になるなぁ。
S&Mシリーズ(→感想) などを書いてる森博嗣が、小説家になった経緯や心構え、そして、出版業界のアレコレについて書いた本。なんとなく自作を貶めるというか、斜に構えた筆致が、ファンとしてはもやもやするのだけど、そういう態度もファン向けのポーズなのかしらん。ファンとの関わり方も含めて、ビジネス的な観点を強く意識した心構えが、社会人としては非常に共感できる。一貫しているのは、「仕事は報酬を得るためのもの」「仕事に好き嫌いを持ち込むな」という当たり前の意識。そして、「本好きばかりの出版業界は、当たり前のビジネスが成立していない」と断じる。そこには憧れの職業としての小説家、出版業界の姿は微塵もない。プロモートの一環としてのホームページの扱いや、ネット書評との係わり方も書かれていて、いろいろと楽しい。ファンの反応に関する件とかは、一応私も、ブログとか書いててもさまざまな感想をいただくので、その点でも、いろいろと共感する部分もあったり(^^;。……それにしても、この本自体も、顧客としての読者の反応を意識して書かれてるんだろうけど、どこまで本音なんだろ。
[ 2010.06.25 ]