2016年 8月 1日
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オーバーラップ オーバーラップ文庫
◆ 最果てのパラディンII 獣の森の射手 /柳野かなた -
1巻は、アンデッド3人と主人公のみという尖がった舞台設定だったので、2巻はどうするのかすごく不安だったのだけど、うわっ、マジにスタンダードなファンタジーになってる。旅をして仲間を集め協力して中ボスを倒すという、いや、ここまで普通に振ってくるのはすごいな。
そんなふつうのファンタジーになった2巻だけれども、堅実な筆致で相変わらずおもしろい。丁寧にフラグを立て伏線をはって回収していく物語づくりは、ほんと素晴らしいね。常人離れして強い主人公ウィルの扱いもうまいな。でも、タイトルを回収して、とりあえず北の大陸に行くような感じもあるのだけど、続きはどうするんだろ?
それにしても、あくまで萌え要素は排除していく方向か。メネルなんて、ふつーであればヒロインポジション以外ありえないだろっ。
[ 最果てのパラディン ]
2016年 8月 8日
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フェアベル フェアベルコミックス
◆ 星の瞳のシルエット ENGAGE III /柊あおい -
うわっ、『星の瞳のシルエット』の新作、昨夏のは知ってた のだけど、昨冬にも出てたのか。気づいてなかったorz。あぁ、『姫ちゃんのリボン』の新作とともに、『りぼん』の増刊号に載ってたのんね。柊あおいの旧作は、集英社ではなくフェアベルという会社が権利を管理してるようなのだけど、この新作短編もフェアベルからすでに電子書籍として出てます。ということは、りぼんマスコットコミックスから単行本の形では出ないのか……。
それはともかく、この新作は、大学時代の沙樹と司を描いたもの。ちなみに、1989年に連載終了した大人気少女漫画『星の瞳のシルエット』は、その後、新キャラの遠野行視点で大学時代の香澄と久住に焦点をあてた『ENGAGE』、『ENGAGE』の続編でおケイに焦点を当てた『ENGAGE II』、昨夏に出た高校卒業を描いた『ENGAGE』があります。そして、この『ENGAGE III』で沙樹と司を描いたわけだけど、えっと、森下さんと日野君の新作はいつ出ますか?
で、この新作、司法試験の勉強を頑張る沙樹と高校時代から変わらず女の子を侍らせている司の、あるクリスマスの物語。うーん、やっぱり、香澄の絵柄はちと当時との差異が気になるなぁ。沙樹と森下さんの絵柄は連載当時から違和感ないのだけど。あー、何気に、ぽん太くんとか出てきたのは、懐かしいな。物語は、沙樹の大学の友人が司に魅かれて香澄の二の舞か!? という展開なのだけど、その友人役の由莉子がおケイ系のキャラデザなので、ちょっと深刻度が足りないよね(笑)。まあ、『星の瞳』本編ような泥沼展開になるのは、すべて香澄が悪い。……しかし、沙樹はマジに弁護士志望なのか。作中で成績上位だった久住でも東北大レベルなのに、成績的にはふつうレベルだった沙樹が弁護士志望とか、やっぱ、無茶じゃないか?(^^;
[ 『ENGAGE III』感想 ]
2016年 8月 9日
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学研 ピチコミックス
◆ 桜坂ノスタルジア /柊あおい -
柊あおいの久々の恋愛物語『桜坂ノスタルジア』、電子書籍のみだけど、いつの間にか出てたのかっ!! や、少女向けファッション雑誌「ピチレモン」の創刊30周年記念企画としてはじまったものの、途中から雑誌掲載は中断されてWeb掲載のみになったり、実質打ち切りみたいな状況になっていたので、正直、単行本の形で一冊にまとまって発売されるとは思ってなかったよ。……電子書籍だけだけどなー。
で、この『桜坂ノスタルジア』、「ピチレモン」創刊30周年記念企画として、30年前、読者の母親世代の恋愛を描くというコンセプトの作品。「ケータイもメールもない時代の恋愛って…?」というキャッチフレーズなのだけど、そういう時代を感じさせるような描写があるわけではなく、また、“ジブリ映画『耳をすませば』の作者”として期待されたであろう、あの映画を感じさせるような描写があるわけでなく、どうみても「ピチレモン」としては、完全に企画倒れのような作品になっちゃってるのよ。ただ、柊あおい黄金時代の『星の瞳のシルエット』『(漫画版の)耳をすませば』『銀色のハーモニー』を感じさせる内容で、柊あおいファンとしては、たまらない作品に仕上がっています。
柊あおい定番の女子三人、男子二人の人物構成。主人公・夕姫の百面相は、『耳すま』の雫そのまんまだし、降矢、都築との出会いや関係は、『耳すま』の雫、航司、聖司の関係そのもの。降矢の成績優秀で映画制作という夢を追いかけるという部分は、絵描きを目指す聖司やピアニストを目指す『銀ハモ』の海を彷彿とさせ、夕姫の友人となる美涼と綾菜は、『星の瞳』のおケイや真理子を感じさせる。この5人が自主制作映画を作り始めるのですが、柊あおいの連載作品には、同じく自主制作映画を題材とした『ペパーミント・グラフィティ』があったりするわけじゃないですかっ。
物語としてはコミカル寄りで、当時のような詩的でリリカルな表現や空気感はなくて、そもそも恋愛未満のまま終わってしまっていて残念でしかたないのだけど、でも、ほぼ20年ぶりに柊あおいファンが求めていた「りぼん」時代の柊あおいを感じさせる作品になっている。正直、当時の柊あおいファンしか楽しめない作品のような気もするのだけど、柊あおいファンにとっては、20年ぶりの同窓会のような作品。とにかく懐かしさがたまらないっ!!
[ 『桜坂ノスタルジア』感想 ]
2016年 8月 14日
- ◆ [映画] シン・ゴジラ
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周りで評判が良かったので見に行ったのだけど、なるほど素晴らしい。特に、前半の、短いカットでテンポよく進む展開が堪らないですね。後半の、みんな大好き新幹線や在来線も、やっぱ好きすぎる。ただ、前半に比べると、後半は無駄に思えるシーンも増えてテンポもいまいちで、ちとダレる感がするのが残念でしたけど。
いやー、考えてみれば、ゴジラシリーズって、そんな好きじゃなかったんですよね。昔見たのって、昭和時代の低年齢向けになった頃の作品だと思うのだけど、あれは子供心に子供だまし感がひどかった記憶しかない。大人になってから、初代ゴジラも見たのだけど、「オキシジェンデストロイヤー」を巡る人間模様が茶番にしかみえなくて、さっぱり良さがわからんかった。同じ特撮でも、ウルトラマンシリーズのほうは、そこそこ楽しんでみてた記憶があるんですけどねー。
総監督の庵野秀明に関しても、昔、『トップをねらえ!』『ふしぎの海のナディア』『新世紀エヴァンゲリオン』の頃の印象で、好きでこだわる部分とそれ以外の落差が酷いというか、好きなシーンだけを撮りたいタイプの人で、脚本や監督をやらせちゃいけないと思うんですよね。ただ、今回の『シン・ゴジラ』に関しては、その好きにこだわる部分が存分に発揮されて良い作品に仕上がった感じ。ゴジラ上陸、再上陸といい、自衛隊との戦闘といい、日本政府の対応の見せ方といい、ほんと、好きで楽しんで作ってる感じがアリアリとしていて、見てて楽しすぎた。どう考えても観客とか意識してなくて、自分で作りたいものを作ってるだけだろっ。
後半、石原さとみ演じる米国特使のドラマ部分や、3.11を意識した脚本は、明らかに安っぽくってテンポも悪く、そこら辺は残念。初代ゴジラを観た時も、「ゴジラが東京を破壊してそれで終わればよかったんじゃね?」と思ったのだけど、今回の『シン・ゴジラ』も、下手な物語やテーマなんて用意せず、ゴジラとの闘いだけ描いとけばよかったんだけどなー。
[ [映画]『シン・ゴジラ』感想 ]
2016年 8月 15日
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小学館 ガガガ文庫
◆ 弱キャラ友崎くん Lv.1 /屋久ユウキ -
「好きラノ」で評価が高かったので購入。って、てっきり、『神のみぞ知るセカイ』とか『ノーゲーム・ノーライフ』みたいなのを期待してたのだけど、違った。コミュ障が「人生」をゲームに見立てて攻略していく話だと聞いていたので、ゲームで培った能力を駆使して攻略していくのかと思ってたのだけど、そうではなく、それまで趣味に逃避していた人間が現実に向き合い努力するような青春ストーリーでした。青春ストーリーとしては評判に違わない出来だとは思うんだけど、期待してたのとずいぶん違う(^^;。
や、ヒロインの日南葵のキャラが際立っていて、眼鏡をかけた風香ちゃんもなかなか可愛くて、キャラの立っている青春ストーリーとしてはおもしろい。でも、主人公の友崎のはまってるのがゲームじゃなかったとしても、物語は成立するよね。いやー、友崎の得意なゲームって格闘ゲームなんですよね。にもかかわらず、作中で描かれる「人生」の攻略方法って、格ゲーというよりRPG。「人生」の面白さが、友崎の信奉する格ゲー「アタファミ」と共通点があるように見えないのもツライ。正直、友崎が心を入れ替えて「人生」に挑んでいくことに対する説得力が、かなり弱いのよ。物語の根幹となる部分で、それではちょっと完成度低いよね。
結局、日南葵のキャラが突き抜けていて、そこが面白いところではあるのだけど、やっぱし、日本一のゲーマーならではの特徴的な何かが欲しかったなぁ。そして、日南葵も、キャラはぶっ飛んでるのだけどラブコメ向きのキャラでもないし、続けるのもなかなか難しそう。続くみたいだけど。
[ 弱キャラ友崎くん ]
2016年 8月 16日
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アスキー・メディアワークス 電撃文庫
◆ ソードアート・オンライン18 アリシゼーション・ラスティング /川原礫 -
ちょっ、プロローグぅぅぅぅっっっ!! いやー、途中までは、どうにもいまいちにしか思えなかったのだけど、最期のプロローグだけで、もう、途中までの不満はどうでもいいわっ。完全に想像を超えるラストすぎるぅぅぅっ!!
そゆわけで、キリトが復活し、いよいよ全てに決着をつける最終巻。あとがきを読むと、元のWeb連載はここで完了していて、電撃文庫版も当初はここで完結する予定だったのんね。なるほど、確かに区切りとしてはいい。でも、キリト復活も盛り上がりに欠けるし、その後の展開もいまいちで、物足りないこと甚だしい。ラスボスは敵として魅力的でないし、そういう敵であれば、それこそキリトの剣技で圧倒してほしかったのだけど、中途半端で消化不良なバトルは褒められたものじゃない。その後の展開も、キリトとアスナは悲壮な感じで書かれているけど、どう見ても、二人でいちゃいちゃ幸せに暮らしてるビジョンしか思い浮かばないのにその辺りは描かず、それでいて、表の世界でキリトたちなしで盛り上がって何が面白いんだ? アリシゼーション編自体がそもそも出来が悪いと思うのだけど、それがラストまでいまいちで、さすがにこれはダメだろう。
という風に思って読んでたのだけど、いやぁ、最期のプロローグが素晴らしい。って、エピローグではなくてプロローグなのな。つまり、次巻はあの続きになるのかっ!! まあ、キリトなんかは、現実世界にあまり興味ない風に書かれているし、もう、ずっと若いまま嫁に囲まれたSF展開で、マジいいんじゃないかしらん。続きが楽しみすぎるっ!!
[ ソードアート・オンライン ]
2016年 8月 18日
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小学館 ガガガ文庫
◆ 妹さえいればいい。5 /平坂読 -
おぉ、即断する伊月がかっこいいな。新しいステージ……、次回、物語も大きく動いていくのかしらん?
今回は、編集部にバイトに入った白川京の主役回。編集のお仕事紹介になってるけれど、編集の仕事って、すぐに裸になるものなのか。というか、気が付けば、すぐに裸になってるよな、京。や、京のお仕事風景が中心で、ライトノベル編集の仕事を興味深く読んでたハズが、振り返ると、編集が具体的になにをやっているのか、いまいちわからないんですが(^^;。
ラストの展開は大きく物語を動かしてきた感じがするけれど、ラノベの主人公らしくなく即断する伊月が、やっぱり、かっこいいなぁ。次回あたり、「妹のすべて」のアニメ化がいよいよ本格化しそうだけど、次回は、アニメ制作のお仕事紹介みたいになるのかしらん? でも、伊月の部屋の外でぐだぐだする話が減ると、今回みたいに、物語としては重要なハズの那由多や千尋の出番があまりないような。や、今回の千尋の扱いには笑ったけど。なにかありそうな展開だったのに、イラストって(笑)。
[ 妹さえいればいい。 ]
2016年 8月 24日
ライトノベルと一般文芸の中間に位置するといわれるライト文芸ですが、各地の議論を見ていると思った以上にイメージにばらつきがあるように思えます。それを無理やり大きく二つに分けると、
- 大人向けライトノベルがライト文芸だよ派
- 20代女性向けライトミステリーこそがライト文芸だよ派
という感じでしょうか。ライト文芸の特徴は、ターゲットの年齢層や性別、萌え要素の大小の観点で語られることが多いのですが、ただ、ターゲットの年齢層に関していえば、すでにライトノベルの読者層が高年齢化してきていて、例えば、電撃文庫でも40代まで視野に入れてたり、Web小説のノベライズは30代が主要ターゲットだったりするんですけど、そのライトノベルの現状の読者層を知らずに議論している人も多く、このことがライト文芸の定義に関する混乱をさらに大きくしてるようにも思えます。
ダヴィンチニュースの ライト文芸の紹介記事 をはじめ、昨年からのライト文芸に関するニュースを見てると、ライト文芸は、おおよそ「『ビブリア古書堂の事件手帖』のフォロワー」という文脈で語られることが多く、そうであれば、広く大人向けのライトノベル全般を指す言葉ではないハズなんですよね。ただ、「ライト文芸」という真新しいキーワードが出てきたとたん、出版社や書店がこぞって売りたい作品を投げ込んでカオスになっている印象。アニメイトのブログによれば、ライト文芸を“『ログ・ホライズン』、『転生したらスライムだった件』、『幼女戦記』……などなど”と説明していて、これだと、『ビブリア古書堂の事件手帖』から続く20代女性向けのライトミステリーとは、かなり印象が違います。
もともと、90年代には「ジュニア小説」「ティーンズノベル」と呼ばれていた小説が、読者の年齢が上がったことで10代向けを意味する名前を捨てて「ライトノベル」と呼ばれるようになり、やがて、さらに年齢が上がったライトノベル読者をターゲットに各社挑戦していくのですが、富士見書房のStyle-Fや幻冬舎の幻狼ファンタジアなどの屍を超えて、ようやく当たった一つが『ビブリア古書堂の事件手帖』のようなライトミステリーを中心とした作品で、もう一つが『ログ・ホライズン』などのWeb小説のノベライズ。
ライトミステリーは「萌え」を抑えることで従来のライトノベル読者以外の層の取り込みに成功したと語られる一方、Web小説はスレイヤーズ時代のような異世界ファンタジーを大々的にプッシュすることで、かつてのライトノベル読者を呼び戻した、と言われています。この二つの流れの両方ともをライト文芸と呼ぶか、それとも、『ビブリア古書堂の事件手帖』を中心とした作品群だけをライト文芸と呼ぶか、どちらがコンセンサスを集めているんでしょ。
そいえば、Web小説の成功は、このようにスレイヤーズ世代の好みにうまく合致してたことが一つにあるのだけど、そもそもスレイヤーズ世代って、
- 『スレイヤーズ』に代表される異世界ファンタジー全盛期にラノベにはまり、
- その後、Leaf や Key などの萌えゲーに どっぷり浸かってた世代
なんですよね。つまり、萌え萌え異世界ファンタジーがめちゃくちゃ好きな世代じゃねーかっ!! ……あ、このスレイヤーズ世代が好きなライトノベルって、若い子から、「最近のラノベwww」と馬鹿にされてるヤツだ。そう考えると、ライトノベル全体がスレイヤーズ世代の好みに調教されているとも言えて、えっと、ライト文芸が大人向けライトノベルか否か以前に、大人向けライトノベルとふつうのライトノベルを区別する意味ってあるんでしたっけ?
[ ライト文芸の定義問題 ]
2016年 8月 27日
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KADOKAWA 富士見ファンタジア文庫
◆ ゲーマーズ! 5 ゲーマーズと全滅ゲームオーバー /葵せきな -
だらだらといつまでもこのままの状態を続けるのかと思ってたのだけど、ここで修復できなそうにない境界を一気に踏み越えてきたな。サブタイトルの通り、まさに、“ゲームオーバー”。……ここでエンディングに向かうには、まだまだ機が熟していないと思うんだけど、どうするんだこれ? うやむやにして元の状態に戻すには、マジ踏み込みすぎだろっ!!
壮大にすれ違いまくっててメンドクサイ人達の青春ラブコメ第五弾。亜玖璃と景太が恋愛相談することで、ますますすれ違っていく景太と天道、亜玖璃と上原。起死回生を狙って、天道と上原はダブルデートを提案するが、景太と亜玖璃は、これで別れを告げられると思い込み……。いやもう、景太と天道、亜玖璃、上原の4人はめんどくさいことこの上ないのだけど、こういう関係になると、千秋と心春が微妙に空気になってきてるのだけど、ま、どちらにしろ、全員、ゲームオーバーだ(笑)。既成事実、怖いよ、がくがくぶるぶる。ニーナ先輩やゲーム部も、もうちょっと絡んでくるかと思ったのだけど、そっちのほうは、ここまでなのかなぁ。しかし、ほんと今回、ラストが凶悪すぎるわ……。
[ ゲーマーズ! ]
2016年 8月 31日
- 09/02 [文庫]彼女がフラグをおられたら 冥土の土産よ、最期に卒業式のことを教えてあげるわ /竹井10日
- 09/10 [文庫]魔法科高校の劣等生(20) 南海騒擾編 /佐島勤
- 09/14 [文庫]りゅうおうのおしごと!(4) /白鳥士郎
- 09/15 [文庫]皿の上の聖騎士(2) - A Tale of Armour /三浦勇雄
- 09/17 [文庫]織田信奈の野望 全国版(16) /春日みかげ
- 09/17 [文庫]天と地と姫と(1) 上杉謙信 龍の誕生 /春日みかげ
- 09/30 [文庫]覇剣の皇姫アルティーナXI /むらさきゆきや