最近10年の柊あおい作品

長年、柊あおいファンを自認していたのですが、ここ10年ほど柊あおいの活動をまともにチェックできてなかったので、読めていなかった作品を買い集めてみました。Amazonのおかげで古い雑誌でも簡単に入手できます。Amazon様々です。

ちなみに、柊あおいというと、『星の瞳のシルエット』や『銀色のハーモニー』『耳をすませば』など、少女漫画雑誌「りぼん」で活動されているイメージが強いと思いますが、「りぼん」からは1990年代半ばに卒業し、ここ20年ほどは、「マーガレット」「YOU」辺りに活動の場を移しています。「りぼん」時代と比べると、大人の女性の悩みなど、恋愛色の薄い作品も増えています。そこはデビュー当時からのファンとしては、少し残念。最新作は、少女向けファッション雑誌『ピチレモン』のWebサイト 上で連載されてるのですが、さすがに、少女向けファッション雑誌とかチェックしとらんよー。

というわけで、最近10年の柊あおいの全作品を、以下に紹介。最新作の『桜坂ノスタルジア』が、ここ10数年の柊あおい作品にはなかった少女漫画らしい少女漫画になっていて、柊あおいの「りぼん」時代の作品群に勝るとも劣らない素晴らしい作品です。『星の瞳』や『銀ハモ』が好きだった、かつての250万乙女の仲間たちには、ぜひともお勧めしたいです。

ないものねだり (ザ・マーガレット 2004-2006)

更紗は中学三年。父と死別して5年、母が再婚すると言い出し、しかも、再婚相手には一歳違いの男子がいて……。と、母の再婚後、お約束的に義兄になる諒を好きになっていく話。諒が料理好きだったり、更紗の友人には、昔から諒に片想いしていたお苑ちゃんや、さっぱりした性格の祐未が出てきたり、もちろん、家族なのに好きになる悩みだったり、『星の瞳』や『銀ハモ』を連想する要素も多い。ただ、たった4話にもかかわらず、恋愛話だけでなく、親の再婚への反発や、再婚後の葛藤、将来の話など、ちょっとテーマを詰め込みすぎで、描写や深みが足りてない。柊あおいの持ち味は生かしきれてないかなー、という印象です。

天使のためいき (YOU 2007)

転勤を機に別れを告げられたOLの由梨。ショックを受ける由梨は、中学時代にファーストキスを奪われたトラウマを思い出す……。25才のOLが振られたショックから一歩踏み出すまでの話なのだけど、主人公の由梨に、感情移入も共感もできなくて、ツライ。女性が感情移入して読むタイプの話だと思うので、20代30代の女性が読むと、いろいろ共感できると思うのだけど。

光降る朝 (office YOU 2008)

3歳の娘を持つ祐美は、働きながらの育児でストレスが限界に……。育児に疲れる母親に「そんなに思い詰めないで」とメッセージを贈るような作品なのだけど、まあ、なんもかんも旦那が悪い。育児はわからんけれど、仕事はもっと雑でいいと思うのだけど、手を抜けない性格だといろいろツライよね。どうみてもメンタル発症していて、本人の気の持ちようでなんとかなる、という話ではなく、家族も職場も、もっと周りがサポートしろよ、という話だよなぁ。

夢幻時間 (YOU 2009)

はじめて化粧をした自分の姿に戻れる不思議な鏡台。その不思議な鏡台で若い姿に戻った寧子は、15年前に別れた彼氏に会いに……。これも、30代女性が読むと、共感なり反発なり、いろいろ想うところが多そうな作品。相手を想って身を引いたり、10数年越しの恋というのは柊あおいらしいモチーフだよね。

夢幻時間 -川辺の約束- (YOU 2009)

いじめを受けていた春子は不思議な雰囲気の女性、秋子と出会い救われる。しかし、その秋子が突然いなくなり……。不思議な鏡台に纏わる短編の二作目。前作は不思議要素がなくても成立するような話だったけれど、今回は、不思議要素がより重要に、うまく使っている印象。綺麗に泣ける話に仕立ててあって素晴らしい。

ねこもーそー (まんがライフオリジナル増刊号など 2007-2010)

掲載誌が少女/女性向けでないためか、絵のタッチまで変えていて新鮮。猫がしゃべりだしたり、猫の集会に紛れ込んだりする「猫でいろいろもーそーしてみました」というコミカルな連作短編。方向としては、『バロン 猫の男爵』というか『猫の恩返し』。てか、ムタ~ルとかバロ~ンとかいうセルフパロディのような濃いキャラの猫が出てくるし(^^;。

あと、今回は手に入らなかったのだけど、「まんがくらぶオリジナル増刊2010年5月号・もふもふ」に、『たびねこ』という短編が掲載されていた模様。タイトルや掲載紙からみて、『ねこもーそー』と同系統かしらん?

桜坂ノスタルジア (ピチレモン 2014-)

夕姫が高校に入学したのは1985年。女子中出身のため、男子との出会いに憧れていたが……。と、少女向けファッション雑誌「ピチレモン」の30周年企画として、30年前の高校生の恋愛を描くというコンセプトの作品。1~4話は「プチレモン」で連載、5話以降は、Web上で連載中。柊あおい久々の少女漫画らしい恋愛モノで、主人公で感情がすぐ顔に出る夕姫に、はっきりした性格の美涼と可愛い系の綾菜、映画好きで夢を追いかける隆矢に、やさしい眼鏡男子の都築と、柊あおいらしい女子三人、男子二人のキャラ構成だったりするのも、もう、なにもかもが素晴らしい。

ただ残念なことに、Web掲載中の最新が 9話。「ピチレモン」のバックナンバーで追えるのが 1~4話。えっと、Webで掲載されていた 5~8話はすでに読めなくなっているのですが、これはいったいどうすればorz。

[ 2015.05.12 ]